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SFA・CRMの保守会社から、なぜ改善提案が出てこないのか?

SFA・CRM・MAの保守会社は、問い合わせや設定変更には契約どおり対応してくれる。それなのに、業務をどう変えるべきかという提案は、なかなか出てこない。そう感じている担当者の方もいるのではないでしょうか。その背景には、保守担当者の力量だけでなく、契約の範囲や担当者の配置、保守事業の採算といった、外からは見えにくい事情があります。この記事では、改善提案が出にくい理由と、今の保守会社への相談の方法、他に取れる選択肢を順に解説します。

保守対応と業務改善の提案は、何が違うのか?

保守対応と改善提案のいちばん大きな違いは、仕事の起点です。保守対応の典型は、ユーザー企業からの依頼に応える仕事です。「この項目を追加したい」「この画面が開かない」といった依頼には、何をすればよいかがすでに含まれています。保守会社の役割は、それを正確に、早く、安定して実行することです。

一方、改善提案は「何を変えるべきか」を考えるところから始まります。現状の業務と利用状況を調べ、どこに問題があるかを見つけ、変更の優先順位と効果、影響の範囲を示す。依頼が届く前の段階で「課題を見つけにいく」仕事です。

保守対応と業務改善の提案の違い
観点保守対応業務改善の提案
仕事の起点ユーザー企業からの依頼課題の発見
何をするか依頼の中で、すでに決まっているこれから考える
必要な情報依頼内容と製品の仕様事業や部門の目的、重視する指標、判断する人、利用状況
主に求められる力製品の知識、正確な設定、素早い回答業務の分析、関係者の調整、要件の整理
仕事の成果設定の完了、問い合わせへの回答変更の優先順位、効果と影響範囲の見通し
契約上の扱い保守契約の対象契約によって異なる(保守契約に含まれる場合も、別契約になる場合もある)

改善提案には、保守対応とは別の材料が必要です。営業やマーケティングの部門が何を目指しているのか、どの数字を良くしたいのか、変更を誰が判断するのか。こうした情報がなければ、提案の出発点がありません。課題を探すための調査や分析の時間と、それを担える人材も必要になります。

ただし、保守契約の中身は会社や契約によってさまざまです。問い合わせ対応と設定変更だけを対象にした契約もあれば、定期的な利用状況のレポートや、不具合を未然に防ぐための予防的な対応、改善の提案までを含む契約もあります。後者のように保守会社の側から動く対応が含まれていれば、保守契約の中で改善提案を受けられることもあります。まずはお手元の保守契約書や見積書、提案書を開き、対応範囲や定期報告、成果物に「改善提案」や「業務分析」が含まれているかを確認してみてください。含まれているのに提案が出てこない場合は、次章で説明する背景が関係している可能性があります。

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保守会社から改善提案が出にくい3つの背景

契約の範囲に改善提案が含まれていない場合はもちろん、含まれている場合でも、期待するような提案が出てこないことがあります。その背景は、大きく3つに整理できます。

1. 改善の目的や判断材料が、保守担当者に届きにくい

保守担当者は、ユーザー企業のSFA・CRMの設定や利用環境をよく知っています。どの項目がどう使われ、どんな権限設定になっているかは、ユーザー企業の担当者以上に詳しいこともあるでしょう。

しかし、設定や環境を把握していることと、業務の課題を見つけられることは別です。たとえば、ある項目の入力率が低いことは、設定画面や利用データから分かります。ただ、その原因が、項目自体が業務に必要ないからなのか、入力のルールが現場に伝わっていないからなのか、業務の流れと入力のタイミングが合っていないからなのかは、設定の情報だけでは判断できません。原因によって、項目を削除するのか、周知し直すのか、画面や業務の流れを見直すのか、取るべき対応は変わります。しかも、こうした利用状況を継続して分析することが、保守業務に含まれているとは限りません。

保守担当者はシステムの設定や画面構成に詳しくても、商談の進捗状況や失注理由、入力状況など、システムに蓄積された業務データを継続的に分析しているとは限りません。日常の保守業務が問い合わせ対応や設定変更を中心としている場合、こうした分析は業務の対象外になっていることがあります。

2. 設定・実装と、改善の設計では必要な専門性が違う

保守会社の中には、いくつかの役割の人がいます。会社によって呼び方は違いますが、おおよそ次のような役割です。

  • PMや上位のコンサルタント: 業務を分析し、改善の方針を立てる
  • ディレクター: ユーザー企業との窓口になり、作業の進行を管理し、設定担当や技術者に指示を出す
  • ノーコードの設定担当: SFA・CRMの画面や項目、自動化の設定を行う
  • 技術者: プログラムのコードやAPIによる連携など、技術的な設計と開発を行う
  • 営業窓口: 契約や追加の依頼について相談を受け、必要な専門人材につなぐ

規模の小さい会社では1人が複数の役割を兼ね、規模の大きい会社では役割ごとに担当が分かれていることがあります。PMや上位のコンサルタントが、必要なときだけスポットで参加する体制もあります。

ユーザー企業と保守会社の役割:誰が決め、誰が実行するか

ユーザー企業:決める

保守会社:実行する・判断材料を示す

ユーザー企業予算責任者費用・投資を承認する
契約・追加の相談
保守会社営業窓口相談の受付・専門人材への接続
ユーザー企業業務責任者方針決定・改善依頼
保守会社PM・上位コンサルタント業務分析・改善方針(必要時に連携)
ユーザー企業運用担当者要望をまとめ、保守会社に依頼する
日々の依頼回答・作業の完了
保守会社ディレクター窓口・進行管理・作業の指示
作業の指示
配下の保守担当
保守会社ノーコードの設定担当画面・項目・自動化の設定
保守会社技術者コード・API連携・技術設計
  • 運用担当者は、日常の窓口であるディレクターとやりとりし、ディレクターが配下の保守担当(ノーコードの設定担当・技術者)に作業を指示します。
  • PM・上位コンサルタントとは、必要なときに連携します。ディレクター・ノーコードの設定担当・技術者は、会社によっては1人が複数の役割を兼ねます(点線の枠)。
  • 業務のルール・優先順位・予算はユーザー企業が決め、保守会社は設定・実装と判断材料の提示を担います。

保守会社に専門の人材が在籍していることと、保守を依頼した企業の契約にその人材の時間が割り当てられていることは、別の話です。保守会社のホームページに経験豊富なコンサルタントが紹介されていても、日常の保守を担当しているのはディレクターや設定担当だけ、ということはありえます。設定作業に精通している担当者であっても、業務課題を分析し、改善策を設計するためのスキルまで備えているとは限りません。

3. 経験のある人材の時間と費用、追加提案の見通しが配置を左右する

3つ目は、保守会社の経済的な事情です。ユーザー企業からは見えにくい部分ですが、どのような担当者が付くかを理解するうえで欠かせません。

業務を分析して改善策を設計できる人材は、保守会社の中でも人数が限られ、費用も高くなります。人件費の水準を知る手がかりとして、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、ITコンサルタントの賃金(年収)が全国で889万円と示されています。同サイトは、この数値が必ずしもITコンサルタントだけの統計ではないと注記しています。また、これは働く人が受け取る賃金であり、保守会社が負担する人件費の総額や、契約の料金に含まれる原価とは別のものです。

一方、問い合わせ対応や定型的な設定変更を中心とする保守契約は、その範囲の作業を安定して提供できるように料金が組まれています。その料金の範囲で、経験のあるコンサルタントを継続して割り当てることは、保守会社にとって採算が合わない場合があります。

契約と体制の組み合わせによって、改善を考える時間がどこに確保されているかは変わります。たとえば、次のような例が挙げられます。

  1. 月額定額で、対応時間に上限がある契約: 毎月の問い合わせや設定変更でその時間を使い切ると、改善を検討する時間は残りません。
  2. ディレクターが窓口と設定作業を兼ねる体制: 依頼への対応は早く進みますが、業務を分析する役割は担当に含まれていないことがあります。
  3. 上位のコンサルタントが必要なときだけ参加する体制: 改善の検討ができる一方で、参加するきっかけがなければ関与の機会は生まれません。
  4. 日常の対応とは別に、改善を検討する時間を確保した契約: 改善提案を受けやすい形ですが、その分、月額の契約料金が高くなるか、別途費用が発生する場合があります。

保守を依頼した企業の側から見ると、1のような契約では、日々の依頼が多い月ほど改善を考える時間がなくなっていきます。依頼にきちんと対応してもらっていることと、改善の提案が出てこないことは、同じ契約の中で両立してしまうのです。

ノーコードの設定にも、同じような事情があります。ノーコードの設定は、製品に備わった標準機能を組み合わせて実現するため、プログラムを個別に書く開発に比べて、実装の工数が相対的に下がります。そのため、開発より低い価格で提供されることもあります。ただし、減るのは実装の手間です。業務を分析し、要件を整理する負荷は別のもので、実装の手間と同じようには小さくなりません。料金が設定作業の量をもとに決まっていると、業務を考える時間は契約に含まれにくくなります。この違いが実際にどう表れるかは、次章の例で見ていきます。

さらに、改善提案のための調査や分析は、提案が採用されるまで費用を請求しにくい先行の作業です。採用されるかどうか分からない提案のために、限られた人材の時間を使えるかどうかは、保守会社にとっては経営上の判断が入ります。その判断には、追加の開発や改善の案件につながる見通しも影響します。見通しが立ちにくいと判断されると、経験のある人材が配置されにくくなることがあります。

つまり、契約の中で改善に使える時間、配置される担当者の役割、提案のために先行して投じられる人材の時間が限られるほど、改善提案は出にくくなります。これは、ユーザー企業が軽く扱われているという意味ではありません。保守会社が限られた人材と時間を配分した結果として、そうなっているということです。

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小さな設定変更でも業務要件の整理が必要になる理由

保守と改善の違いを、具体例で見てみましょう。

ある企業の営業部長から、運用担当者に次の依頼が届きました。

「商談ステージに『稟議中』を追加してほしい」

設定作業としては、商談ステージの選択肢を1つ増やすだけです。選択肢を追加する操作に限れば、多くのケースで設定作業自体は短時間で完了します。

しかし、このステージを実際に使い始める前には、検討しておきたいことがあります。

  • 承認ルートをどこまでシステムに反映するのか。また、値引き幅などに応じた承認条件や制約も設定するのか
  • 誰が、どのタイミングでこのステージに移すのか
  • 受注確度を何%に設定し、売上予測にどう反映させるのか
  • いま進行中の商談のうち、どれをこのステージに移すのか
  • パイプラインのレポートやダッシュボード、MAのスコアリングや通知に影響が出ないか
  • インサイドセールスや経営企画など、同じデータを集計しているほかの部署にどう伝えるか

これらが決まっていない中で選択肢だけを追加すると、人ごとに使い方がばらつき、気づいたときには売上予測の数字が実態とずれている、ということが起こりえます。

「稟議中」の追加で見る設定作業と業務要件の違い(仮想例)

設定作業

商談ステージに「稟議中」を1つ追加

選択肢の追加は画面上の操作で済む

業務要件:使い始める前に検討すること

  • 承認ルートと条件

    どこまでシステムに反映し、条件や制約を設けるか

    必要になる設定・作業承認プロセス・入力の制約

  • 移す担当とタイミング

    誰が、どの時点でステージを変えるか

    必要になる設定・作業入力ルール・必須項目

  • 受注確度と売上予測

    確度を何%にし、予測にどう反映するか

    必要になる設定・作業確度の値・予測の集計

  • 進行中の商談の扱い

    既存の商談をどれだけ、いつ移すか

    必要になる設定・作業既存データの一括更新

  • レポート・MAへの影響

    ダッシュボード、スコアリング、通知

    必要になる設定・作業レポート・連携設定の修正

  • 他部署への周知

    同じデータを集計する部署への連絡

    必要になる設定・作業設定外:周知・手順書の更新

保守を専門の会社に依頼している以上、設定作業だけでなく、こうした確認や助言、要件の整理まで保守会社に期待するのは、発注者として当たり前のことです。

一方で、保守会社が日々の問い合わせや設定変更に対応していても、業務改善の提案が出てこない背景には、保守と改善という仕事の違いに加え、契約内容や担当者の専門性、人員配置、保守会社の経済的な事情があります。

つまり、保守会社が契約どおりに対応していることと、ユーザー企業が期待する改善提案を受けられることは、必ずしも一致しないのです。

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今の保守会社から改善提案を受けるには?

ここまでの背景を踏まえると、今の保守会社から改善提案を受けるために工夫できることが見えてきます。

保守担当者が業務の背景まで理解しているとは限らない

2章で見たとおり、保守担当者は設定には詳しくても、事業や営業の背景まで把握しているとは限りません。改善提案を期待するなら、背景を伝える経路をつくる必要があります。

とはいえ、依頼のたびに「これは設定の話だから保守窓口へ」「これは改善の話だから営業窓口へ」と仕分けるのは、ユーザー企業にとって負担の大きい作業です。どちらの窓口に相談すればよいか迷うこと自体が心理的な負担になりますし、依頼ごとに判断していては手間もかかります。

営業窓口や日常窓口のディレクターに、改めて改善の相談をする

最初の一歩は、保守会社の営業窓口に「改善について相談できる人はいますか」と尋ねることです。営業担当者自身が改善を設計するとは限りませんが、契約や追加依頼についての窓口として対応してもらえます。もしくは、日常の窓口であるディレクターに相談してみてください。

改善を担当できる人材がいる場合は、どのような形で相談できるのかも確認します。定例の打ち合わせに参加してもらえるのか、必要なときだけ相談できるのか、別の契約が必要なのか。経験のある人材の参加や、改善のための追加の調査は、保守費の範囲で無料になるとは限りません。費用がかかるかどうか、かかるならどのような考え方で見積もるのかも、最初に聞いておくと後の判断がしやすくなります。

定期的な打ち合わせで改善について話せる場をつくる

もう一つの方法は、改善について話せる場を定期的に設けることです。すでに保守会社との定例の打ち合わせがあるなら、その場に営業担当者や改善を担える人材に、定期的に、あるいは必要なときに参加してもらえないか相談してみてください。定例がなければ、月に一度や四半期に一度など、無理のない頻度で設けることを提案してもよいでしょう。

定例の場には、双方が持ち寄れるものがあります。

保守会社に持ち寄ってもらいたいもの

  • 繰り返し寄せられる問い合わせや、何度も発生している設定変更
  • 対応の中で気になっている設定や、想定と違う使われ方
  • 利用状況やデータの品質(ログインや入力の状況、空欄の目立つ項目など)
  • 製品の仕様変更や、ほかのシステムとの連携で影響が出そうなこと
  • これらを踏まえて、保守会社が考える改善の候補

ユーザー企業が持ち寄ることができるもの

  • いま現場で困っていること
  • 今後予定している組織や商品、営業方針の変更

これらを突き合わせて一緒に検討すれば、保守会社は改善を考える材料を得られ、ユーザー企業は社内だけでは気づけなかった課題を知ることができます。運用担当者が課題をすべて見つけてから持ち込むのではなく、双方が気づいたことを出し合い、改善のテーマを一緒に見つける場にするのがポイントです。

こうした場があれば、日々の依頼は保守窓口に、改善に関わる話は定例に持っていく、という使い分けができ、依頼のたびに窓口を仕分ける負担も軽くなります。

保守会社との相談・定例会で使える質問
場面質問の例答えから分かること
最初の相談今の保守契約に、定期報告や改善の提案は含まれていますか。問い合わせ対応とは別に、改善を検討する時間は契約の中で確保されていますか契約で期待できる範囲と、改善に使える時間
最初の相談改善について相談できる担当者はいますか。どのような役割の方ですか改善を担える人材が社内にいるか
最初の相談その担当者に、定例の打ち合わせへ定期的に、または必要なときに参加してもらえますか改善を話す場をつくれるか
最初の相談参加や追加の調査に費用はかかりますか。かかる場合はどのような考え方で見積もりますか費用の見通しと、選択肢①の条件
定例会これまでの対応の中で気になっている設定や使われ方、改善の候補はありますか保守会社がすでに持っている気づき
定例会繰り返し寄せられる問い合わせや、何度も発生している設定変更はありますか根本的な見直しが必要な箇所
定例会利用状況やデータの品質から、何が読み取れますか改善の手がかりになる事実
定例会製品の仕様変更や、ほかのシステムとの連携で、当社に影響しそうなことはありますか先回りして備えるべきこと
定例会当社の今後の予定(組織や営業方針の変更など)を踏まえると、先に手を打つべきことはありますか先回りした改善の候補
定例会提案を検討するために、当社からほかに共有したほうがよい情報はありますか双方で補い合う材料

相談の結果、今の保守会社に改善を担える体制があると分かれば、その形で進めるのが自然です。体制がない、あるいは費用や進め方が合わないと分かった場合は、次章で紹介するほかの選択肢を検討します。

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改善を進めるための4つの選択肢

前章の相談を踏まえると、改善を進める方法は大きく4つに分けられます。どれが正解ということはなく、それぞれの企業の状況によって向き不向きがあります。

① 現在の保守会社に改善の支援を追加で依頼する

保守とは別に、改善のための調査や設計、定例への参加などを依頼する方法です。ユーザー企業の環境をすでに理解している相手なので、立ち上がりが早いのが利点です。一方で、追加の費用がかかることがあり、改善を設計できる人材を確保できるかは保守会社の体制によります。同じ会社が改善と保守を担っても、どこまでが保守でどこからが改善か、誰が窓口になるかが自然に決まるわけではないので、依頼の前に判断する必要があります。

② 社内で改善を担う(内製)

社内に業務分析や改善の設計ができる人材を配置し、保守会社には設定や実装を依頼する方法です。社内の業務事情を踏まえて改善を進められる利点があります。

一方で、そもそも社内に専門人材や十分なリソースがないために保守会社へ依頼している企業にとっては、内製化そのものが難しい選択肢です。新たな人材の採用や育成が必要になる場合もあり、短期的に実現できるとは限りません。

③ 改善の支援を別の専門家に依頼し、保守は今の会社に続けてもらう

何を変えるべきかの整理は外部の専門家に依頼し、設定や開発は今の保守会社に任せ続ける方法です。保守会社との関係を保ったまま、改善を担う役割を加えられます。一方で、保守費とは別の費用がかかるうえ、専門家と保守会社のどちらが何に責任を持つかを決め、両者のあいだの調整を続ける必要があります。

改善を継続的に任せるのではなく、現在の保守会社から示された提案や改善方針について、別の専門家の意見を聞きたい場合は、セカンドオピニオンという方法もあります。

④ 保守会社を変更する

改善の支援まで含めた体制を持つ会社に、保守ごと切り替える方法です。今の保守会社との相談やほかの方法を試しても解決しない場合や、対応品質そのものにも課題がある場合に、最後に検討する選択肢です。窓口を1つにまとめられる一方で、これまでの設定内容の引き継ぎや、新しい保守会社が環境を理解するまでの時間がかかります。新しい保守会社が改善提案まで対応できる体制を持っているかは契約前に確認できますが、実際に期待するような提案を受けられるかは、契約してみなければわかりません。保守会社を変更しても、同じ問題が起こる可能性があります。保守会社を変更する場合は、今の契約の解約条件、設定内容をまとめた資料の有無、管理者権限やデータの扱いも事前に確かめておくと、移行の負担を抑えられます。

改善を進めるための4つの選択肢
観点① 今の保守会社に追加で依頼② 社内で担う(内製)③ 別の専門家に依頼し、保守は継続④ 保守会社を変更
何を変えるかを考える人今の保守会社の改善担当社内の担当者外部の専門家(ユーザー企業と協議)新しい保守会社
費用内容によって追加費用がかかる社内の人件費・時間保守費とは別に専門家の費用がかかる切り替えの費用と新しい契約の費用
社内の負担相談や定例への参加業務分析・改善の設計ができる人材と十分なリソースが必要。採用や育成が必要になる場合もある専門家との打ち合わせと情報共有引き継ぎへの対応が大きい。期待する提案を受けられるかは、契約してみなければわからない
責任の分担同じ会社が担うが、保守と改善の範囲や窓口は依頼時に取り決めが必要改善は社内、設定・実装は保守会社改善は専門家、保守は今の会社。分担を事前に決める必要がある改善と保守を新しい会社が担う
関係者の調整社外の調整先は1社で済む社内の部署間の調整が中心専門家と保守会社の調整が続く移行期間は新旧の会社との調整が必要
向いている状況今の保守会社に改善を担える体制がある社内に業務分析や改善の設計ができる人材を配置できる保守には満足しつつ、改善の役割を外部に求めたいほかの方法で解決しない、または保守の対応そのものにも課題がある
  • ① 今の保守会社に追加で依頼

    何を変えるかを考える人
    今の保守会社の改善担当
    費用
    内容によって追加費用がかかる
    社内の負担
    相談や定例への参加
    責任の分担
    同じ会社が担うが、保守と改善の範囲や窓口は依頼時に取り決めが必要
    関係者の調整
    社外の調整先は1社で済む
    向いている状況
    今の保守会社に改善を担える体制がある
  • ② 社内で担う(内製)

    何を変えるかを考える人
    社内の担当者
    費用
    社内の人件費・時間
    社内の負担
    業務分析・改善の設計ができる人材と十分なリソースが必要。採用や育成が必要になる場合もある
    責任の分担
    改善は社内、設定・実装は保守会社
    関係者の調整
    社内の部署間の調整が中心
    向いている状況
    社内に業務分析や改善の設計ができる人材を配置できる
  • ③ 別の専門家に依頼し、保守は継続

    何を変えるかを考える人
    外部の専門家(ユーザー企業と協議)
    費用
    保守費とは別に専門家の費用がかかる
    社内の負担
    専門家との打ち合わせと情報共有
    責任の分担
    改善は専門家、保守は今の会社。分担を事前に決める必要がある
    関係者の調整
    専門家と保守会社の調整が続く
    向いている状況
    保守には満足しつつ、改善の役割を外部に求めたい
  • ④ 保守会社を変更

    何を変えるかを考える人
    新しい保守会社
    費用
    切り替えの費用と新しい契約の費用
    社内の負担
    引き継ぎへの対応が大きい。期待する提案を受けられるかは、契約してみなければわからない
    責任の分担
    改善と保守を新しい会社が担う
    関係者の調整
    移行期間は新旧の会社との調整が必要
    向いている状況
    ほかの方法で解決しない、または保守の対応そのものにも課題がある

選ぶときは、費用だけでなく、社内にかかる負担、誰が何に責任を持つか、関係者間の調整にどれだけ手間がかかるかを合わせて比べてみてください。今の保守会社に改善を担える体制があるなら①、社内に時間と人を割けるなら②、保守には満足しつつ改善の役割を外部に求めたいなら③が、検討の出発点になります。④は、ほかの方法を試しても解決しない場合や、保守の対応そのものにも課題がある場合に検討します。

まとめ:改善提案を受けるために、まず試したいこと

今の保守会社からより良い改善提案を受けるために、まずは次の3つを確認してみてください。

  1. 改善について相談できる担当者はいるか
  2. その担当者に、定例の打ち合わせに同席してもらえるか(費用がかかる場合はその考え方も)
  3. 保守会社が対応の中で気づいた改善の候補を、定例に持ち寄ってもらえるか

答えを聞けば、今の保守会社と改善を進められるのか、ほかの選択肢を考えるべきかが見えてきます。そのうえで、4つの選択肢から自社に合う進め方を選んでください。

執筆者

田邊 幸大オペラニクス株式会社 代表取締役

専門分野SFA・CRM・MAの導入・運用改善、業務分析・要件定義、営業・マーケティング領域のDX

DX・マーケティング領域の企業で取締役を務め、営業統括や事業運営を担うなど、経営に従事。SFA・CRM・MAを中心に、企業のDX推進、業務分析、システムの導入・運用改善までの実務経験を持つ。

今の保守体制で、改善をどう進めるべきか迷ったら

現在の保守会社との関係を維持する方法も含め、改善の進め方についてご相談いただけます。

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